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#003『親の家を相続する前に考えておくべきこと』

『Open base』の代表Sanukiです。

『Open base』は、企業の戦略をサポートする事務所でもありますが、行政書士事務所として個人のお客様のご相談や将来についてもサポートしています。

特に、私は、自社マンションの販売会社や不動産会社に勤務していたこともあり、不動産流通に強い事務所としての面も持っています。

資格としては、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、FP2級を保有している他、(公社)不動産流通推進センター実施の、不動産流通実務検定“スコア”の第6回の特待生(21位/1497人中)にもなっています。

しかしながら、不動産実務は、地域によって法令の取り扱いや条例が異なったり、売却などに関しては、地域性によって大きく状況が変動するため、複雑で難しい場面も多いです。

そんな不動産における相続を今回は、『親の家を相続する前に考えておくべきこと』というテーマで書いていきたいと思います。

1.相続が発生したら何が起こる?

まずは、相続が発生した場合何が起こるのでしょう。
相続に関する条文を見てみます。

(相続開始の原因)
第882条 相続は、死亡によって開始する。

(相続の一般的効力)
第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

(共同相続の効力)
第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

これによると、相続とは、
① 亡くなった瞬間から開始=承継される
② 亡くなった方の全ての財産が、相続分に応じて各相続人に承継される

ということになります。

もう少し別な言い方をすると、実際に財産(遺産)を分割する作業をしなくても、亡くなった瞬間に“概念的に”財産が各相続人に勝手に振り分けられるという話です。

民法ではこのように、勝手に「相続分」という形で、続柄によって、とりあえずの相続分を定めており、これを「法定相続分」といいます。相続人が妻、子ども2人の合計3人のときには、妻1/2、子どもが1/4ずつ といったようなものですが、今回は、細かい割合などの話は割愛します。

つまり、この「相続」によって、亡くなった方の財産は、一部の分けられる財産(「可分債権」)を除き、基本的に各相続人の「共有」状態になっています。不動産も例外ではなく、「共有」状態になります。これは、現在、誰が住んでいるという事情とは関係がありません。

2. 何が問題になるの?

相続においては、いくつか“類型”がありますが、多いと思われるパターンは、

>•A.両親のうち一人が亡くなって、(故人の)妻と子ども達が相続する
•B.両親のうち一人が亡くなり、数年後、残った両親も亡くなり子ども達が相続する

Aパターン(A.両親のうち一人が亡くなって、(故人の)妻と子ども達が相続する)で問題になりがちなのは、

1.(相続する側で見たときに)兄弟姉妹で仲が悪い、連絡を普段全くとらない
2.残った両親が認知症または認知症気味である

などの場合です。

最初の段階でお話しした通り、不動産は相続によって「共有」状態になっています。残った両親の面倒を見ていこうと思って、子どものうち一人が家を自分名義にしようと思っても、共有者である残りの兄弟姉妹を含めた全員での協議、合意が必要です。たとえ、仲が悪かろうと協議のテーブルから外れてもらうことも外れることも通常できません。

また、残った両親の一方にも相続人として、権利義務が承継されているため、こちらも協議のテーブルに加えなければなりませんが、高齢で認知症のような症状が出ている場合は、注意が必要です。協議のテーブルで合意をすることは、法律行為に当たりますので、有効な合意をするためには、「意思能力」が必要とされているからです。

第3条の2
 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

「意思能力」とは、自己の行為の結果を判断することができる精神能力のことです。子どもでいうと大体7~10歳程度の精神能力を指します。意思能力の無い、法律行為は、原則全て「無効」となります。

Bパターン(B.両親のうち一人が亡くなり、数年後、残った両親も亡くなり子ども達が相続する)で問題になりがちなのは、

1.(相続する側で見たときに)兄弟姉妹で仲が悪い、連絡を普段全くとらない
2.両親が住んでいた実家が空き家になってしまう

などの場合です。

Aパターン同様、相続人側から見た兄弟姉妹の仲が悪かったり、普段から連絡を取っていないと手続きがスムーズに行かないことが起こりえます。

Bパターンでは、さらに両親が亡くなることで実家が空き家になる場合は、実家をどうするかという問題が当然出てきます。具体的には、

•固定資産税の支払いを誰がするか
•空き家として扱う場合に、定期的な清掃や保守管理を誰がするか
•最終的に誰が「相続」するか、相続した場合のその先は…?
といったところです。

①固定資産税の支払いを誰がするか
毎年、4~6月頃に各市町村から、その年の1月1日付の所有者宛てに納付書が送られてきます。両親が亡くなって間もない場合は、そのまま両親の自宅に納付書が届いてしまうか、市町村から各相続人宛てに、固定資産税を支払う代表者を指定して欲しいという内容の通知が送られたりします。こちらに関しては、市町村によって多少実務上の取り扱いにバラつきがあるようなので、改めて細かく話す機会を設けたいと思います。

② 定期的な清掃や保守管理を誰がするか
家は、誰も住まないと老朽化が進むというのは聞いたことがあるかもしれません。これは、換気不足による湿度やカビの発生、雨漏りが気づかれないことによる傷み、給排水管が使用されないことによる乾燥、硬化や破損の他、害虫・害獣の発生などが原因で、通常人が住む場合よりも劣化が早く進んでしまうという話です。したがって、両親が亡き後でも実家をとりあえずそのままにしておきたいという場合であっても、定期的な保守管理が必要になってきます。これを誰が行うかということも考えておいた方が良いでしょう。

③ 最終的に誰が「相続」するか、相続した場合のその先は…?
これは、大事なことですが、冒頭で述べた「相続」と③の「相続」は、意味合いが異なります。ここでいう「相続」とは、「相続手続」を意味しています。大部分の方が、「相続」を考える場合には、手続き的な意味合いの「相続」なのではないでしょうか。

最初に書いた通り、不動産の「相続」であっても、概念的には、故人が亡くなった瞬間に「相続」は発生し、遺言などが無い限り、法定相続分に従って、持分として相続人に既に承継されています。
しかし、不動産の名義まで自動的に変わるわけではありません。変える場合は、法務局に「登記」の申請をする必要があります。

登記申請の前提として、相続人全員で遺産分割協議を行って、誰が新たな名義人となるかを決める必要があります。空き家となった実家に住む相続人がいる場合は、そちらの方に「相続」してもらうのが良いでしょう。しかし、子どもが誰もその実家に住む予定がない場合や、売却を考えている場合は、誰が「相続」するかは、必ず出てくる問題です。

(遺産の分割の協議又は審判等)
第907条
共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

売却をする場合でも、検討しなければならないことがいくつかありますが、これはまた改めて細かな記事を書く機会を設けたいと思います。

ちなみに両親が亡くなった後の不動産の名義を「そのまま」にするという選択肢もよく見受けられます。というよりは、当事務所に来る時点で両親が亡くなってから、数年~十数年が経っているというケースがよくあります。

現時点での法令的には、まだ、相続登記は、義務ではありませんが、

令和3年12月の閣議決定によって、令和6年4月1日から義務化される予定となっていますので、改正法の施行後は、相続があったこと・不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。今までのように、十数年放っておくということができないということですね。

しかしながら、今まで義務がなかったことで、相続関係が複雑化し、所有者不明で手が付けられない不動産が山のように発生し、不動産の流通や行政の土地の開発・整備が進まない、空き家問題の深刻化などが生じている今の世の中には必要な法改正だと思います。2017年には、「所有者不明の土地が九州(約367万ha)以上に存在する」という衝撃的なデータの報告がなされています。

こちらは、そういった事情もあるため、過去の相続にも遡って適用がされるので、注意が必要です。施行後に発生する相続だけが対象になるわけではありません。

以上、『親の家を相続する前に考えておくべきこと』

をいくつか書かせていただきましたが、いかがだったでしょうか。

相続問題は、生前からの下準備が大事です。

いずれのパターンにしても、早めに色んなことを想定して動いておくのが良いでしょう。

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