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#006『令和5年度予算編成の基本方針からみる来年度考察』

Open base代表のSanukiです。

年末に差し掛かり、来年3月までの令和4年度も終盤に差し掛かってきましたね。
政府より、『令和5年度予算編成の基本方針』が出ておりますので、少し早いですが、そちらや各省からの概算要求資料を見て来年度の補助金や給付金、重要なキーワードやトレンドなどについて考察してみたいと思います。

基本方針は、そこまで長い文章ではないので、正確なニュアンスを知りたい方は、下記リンクからご確認ください。

令和5年度予算編成の基本方針(令和4年12月2日閣議決定)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/r5_yosanhensei.pdf
Open baseにより少し簡略化したものが、下記です。

基本的考え方

①日本経済は、国際的な原材料価格の上昇、円安の影響によるエネルギー、食料価格の高騰等により厳しい環境にある。

【Open base的考察】
原材料やエネルギーの高騰は、家計に大きな打撃を与えている為、政府による一般家庭や事業者向けの補助政策が定期的・継続的に出される可能性があります。令和4年度においても『電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金』(https://www5.cao.go.jp/keizai1/bukkahikazei/index.html)が一般家庭向けに出されております。現状「非課税(相当)世帯」が対象であるため、最低限度の対策に留まっている感が否めませんが、今後、課税世帯への施策も考えられます。

また、事業者向けの補助金・支援金も自治体によって行っているところもあるので、月に一度程度は、自治体のサイトなどをチェックしてみると良いと思います。

②これらの状況による景気の下振れに備え、財政支出39兆円、事業規模71.6兆円の経済対策を策定。速やかに実行に移す。

【Open base的考察】
2020年からコロナ禍に入り経済は大きく停滞してしまい、コロナ前と比べて財政支出は大幅に増えていっている状況です。財政赤字がとても心配ですが、まずは日本企業への速やかな経済対策を願うばかりです。

③ 官民連携の下、構造的な賃上げや成長力の強化を行うほか、GX、DX分野への投資を促進する。

【Open base的考察】
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーに転換して、脱炭素や経済社会システムの変革を目指すことです。個人向けに出ているものとしては、ZEH住宅などを対象とした「こどもみらい住宅支援事業」として最大100万円の補助がある支援がありましたが、こちらは2022年11月に予算が上限に達したため、受付が終了となっています。追加的な措置で、新たに「こどもエコすまい支援事業」として、ほぼ同内容の支援が決まっています。

こどもエコすまい支援事業について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000215.html

GXは世界全体で取り組むべき問題なので、今後も確実に補助金などで優遇されるテーマになると思います。GXや脱炭素に向けた補助金は、環境省の主導で多く扱われていますが、補助事業者という形で、外部の実施団体が様々入っているため、補助金の把握が難しいところでもあります。

参考までに、令和4年度の補助事業者の一覧についてのリンクを記載しておきます。

2022年度(令和4年度)二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金に係る補助事業者(執行団体)について(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kobo/r04/danntai_R04.html

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)についても、今年度に引き続き来年度も多くの支援や補助金が見込まれます。DXとは、デジタル技術を用いて、企業の業務フロー改善や新たなビジネスモデルを創出することです。また、既存システムからの脱却や企業風土の変革という側面もあります。

④ 少子化対策のため「こども家庭庁」を創設し、出産育児一時金の増額を始め必要な政策の強化を進める。

【Open base的考察】
現状、出産時の一時金は、42万円ですが、2023年4月1日からは、50万円に引き上げられます。

店舗や宿泊施設などに対して国が補助を行う際によく出た議論ですが、補助を受ける側(今回でいうと病院側)が請求額を便乗して値上げした場合、結局、微妙な施策となる可能性があります。まあもし仮に病院側が値上げをしたとしても、50万円の範囲内で済めば手出しは無いので、恩恵を受けられる家庭は多いとは思います。

一方で、仮に今までの基準で45万円の請求額で、3万円の手出しだった場合で、病院側が8万円のステルス値上げをした場合、今回の施策により本来手出しをしなくて良いのに支出を強いられるという結果が起こる可能性もあるかもしれません。
実は、出産一時金は、1994年に30万円の支給から始まり、今回で5回目の値上げです。この10年間出産費用は、年々右肩上がりで上昇しています。出産は、病気やケガではなく、病院側の自由診療であるため、政府側としても後手になって都度上乗せ施策を実施していっている状態が続いています。

⑤ 「国家安全保障戦略」等に基づき、防衛力を5年以内に抜本的に強化する。

【Open base的考察】
連日ニュースを賑わせている項目です。岸田総理は、防衛費を5年間で43兆円確保すると言っており、一方で「裏付けとなる財源は、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が対応すべきである。」とも言っています。岸田総理によると、防衛力強化は、シーレーン(海上交通路)の確保、あるいはサプライチェーン(供給網)の維持に繋がるとし、経済活動に資するという考えです。財源については、今議論されているところですが、現時点では、「法人税」「所得税」「たばこ税」の3つの税目の増税で賄う方針とされています。企業や国民にとっては、経済的恩恵を受けるよりも増税負担を強いられる方が先になりそうです。

⑥ 国内での経済構造の強靭化を図るとともに、半導体等の重要物資の安定供給の確保や先端的な重要技術の育成を通じて経済・食料・エネルギーの安全保障の強化を図る。

【Open base的考察】
こちらは、災害等のリスクに対しての「スマート保安技術」の整備支援と、これらの重要技術への教育、開発支援という2つの面に大きく分けられそうです。GXやDXとも関係しますが、経済産業省の概算要求書から見るに、AI、IoT、ドローン、バイオプラスチック、バイオ燃料、ヘルスケア産業などが重要となる技術や支援の対象として挙げられていますので、これらの分野への補助金や支援策などは出る可能性が高いと思われます。

⑦ ウィズコロナの下、感染拡大防止と経済活動の両立を図る。

【Open base的考察】
厚生労働省からの要求では、医療的な支援などが盛り込まれております。一方で、経済産業省からの要求では、令和5年度は、コロナ関係の経済的な支援は、『事業再構築補助金』や「融資支援」に留まっています。1年前の令和4年度経済産業省の概算要求では、「コロナ禍等の環境下にある中小企業等に必要な支援」という項目がありましたが、今回は大きな項目はない為、「給付金」という名目で、要件に当てはまる事業者に一律に給付する形の支援政策は無いかもしれません。一方で、2022年11月に行われた全国知事会による緊急提言により『事業復活支援金』と同様の支援を提言している点やコロナ情勢が読めない点からも、全く無いとは言い切れません。

⑧ 農林水産業の振興、教育、観光、文化・芸術・スポーツの振興、カーボンニュートラルを目指したグリーン社会の実現等に取り組む。「デジタル田園都市国家構想」の推進。

【Open base的考察】
「デジタル田園都市国家構想」とは、簡単に言えば、デジタル化によって地方社会を便利で快適にさせようという考え方です。根底にあるのは、地方社会にある人口減少や労働生産性の地域格差問題です。これらの問題をデジタルを使って解決させるために、1.基盤整備 2.人材育成・確保 3.取り組み の3つに大きく支援するとされています。

1.の基盤整備には、海底ケーブルなどの物理的なインフラも含まれていますが、実はここに「マイナンバーカードの普及促進」も含まれています。我々、行政書士もマイナンバーカード代理申請業務を行政書士会や連合会が主体となって動いています。光ファイバー網で言えば、2027年度までに世帯カバー率99.9%を目指すということになっていますが、ホントだろうかという感じもします。また、5Gの人口カバー率も2030年度までに99%を目指すとなっています。実際、普通に暮らしていたらあまりこの辺りは見えない部分ですが、私の顧客でも「新しい仕事が見つかった」ということで、基地局の増設業務をされ始めた方がいらっしゃいますので、実際整備が進んでいっているのかもしれません。

2.の人材育成は、学校、企業や求職者に向けてデジタル分野での訓練や教育を支援するという内容ですが、企業向けの話でいえば、厚生労働省が実施している『人材開発支援助成金』などがあり、こういった助成金の対象項目として、デジタルに特化したパッケージが増えていくと思われます。

3.の取り組みとしては、「各自治体に応じた」取り組みを…ということで、柔軟性を持たせているようです。例として、スマートシティ、ワーケーション、スマート農業などが挙げられます。企業としては、各自治体が力を入れて取り組んでいる分野をリサーチして、上手く業務展開、新規参入していく嗅覚や器用さが求められることとなりそうです。

⑨ 経済の再生に取り組み、財政を計画的に健全化する。

【Open base的考察】
岸田総理は、財政の健全化 < 経済の再生 という考え方が根底にあります。(あると言っています。)経済を再生させることで、税収を安定させ、その結果財政を健全化するということだと思います。一方で、増税の話も出ており国民や企業側の負担は増すばかり。はたして経済が本当に再生するのか…。まずは、各々でできる再生案、成長案を見つけていきたいところです。

最後に、まとめ。正直、令和5年度も企業や家計にとって厳しい状況が続くと思いますが、負けずに一緒に頑張っていきましょう。「経済」は、「社会」であり、「社会」とは、「人」であると思います。そして、「人」とは、「子ども」であり、「労働者」であり、「高齢者」でもあります。「個」があって「全体」があること、デジタルを扱うのは、結局「人」だということを、政府や自治体には忘れないでいてもらいたいですね。

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