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#008『農地の相続問題』

Openbase代表のSanukiです

今回は、農地を相続する上で考えておくことについてまとめました。

農地の相続にはさまざまな問題点が存在します。これらの問題点は、地域や法律の違い、家族の状況、農地の価値などによって異なる可能性がありますが、現代における一般的な問題点6つを以下に示します。

 

 

(1)分割の問題

農地は通常、一つの大きな土地あるいは複数の農地をまとめた形で所有、管理されていることが多いため、相続人の間で適切な分割を行うことが難しい場合があります。農地の分割が公平かつ実行可能な方法で行われないと、相続人間の対立や不満が生じる可能性があります。また、農地を管理し、適切に農業を行っていくには農機具など高額な機械器具も引き継いだり、新たに必要となったりします。純粋に土地の評価額だけで判断するのではなく、そういった事情も分割する上で考慮する必要があるため、分割でどう分けるかが問題となることがあります。

 

(2)継続の問題

いわゆる「後継者」の問題です。農地を相続する相続人の中には農業の知識や農業に興味を持っていない場合もあります。また、物理的に遠距離に住んでおり、土地に行くことが容易ではないこともあります。この場合、農地の適切な管理や継続的な農業経営に関する問題が生じることがあります。農地を維持、管理し続けることや、新たな方法で活用する方法を見つけることが求められます。

 

(3)場所不明の問題

(2)継続の問題 に関連して、配偶者や子ども(相続人)が故人(被相続人)の農業に関わって来なかった場合、相続後に“農地の場所さえ分からない”という事態も起こりえます。被相続人が亡くなる頃には農業をすでに辞めている、あるいは農地の耕作規模を縮小していることが多いことや、親と同居せず県外に住む非農業者の相続人も多いことから、普通にあり得る話です。また、相続手続きを数年、十数年せずに放置していた場合、土地に草木が生い茂ってもはやどこか分からないということもあります。相続後に当事務所で調査することも可能ですが、できる限り早い段階から把握しておくことが大事です。

 

(4) 規制の問題

農地は一般的に食糧供給や環境保護に関わる重要な資源であり、農地の保護や適切な利用を求める規制(農地法などの法律)が存在します。相続に伴い取得する農地がどのような法律や規制に該当するのかを確認する必要があります。また、農地の取り扱いが被相続人の生前から適切ではなかった、または違法だった場合には、相続人がその法的規制に適切に対処する義務が生じます。具体的には、無許可で農地以外の状態にしてしまっている「農地の違反(無断)転用」などがそれに当たります。既に行われた違反転用に対しては、追認的に許可を取るか、原状回復(農地に戻す)をする必要があります。

 

(5)処分の問題

(4)規制の問題にも関連しますが、農地の処分(譲渡)は容易ではありません。農地法によって処分が制限されているためです。農地は、原則として、「農業者」に対してでないと譲渡、貸借をすることができません。例外的に農地を農地以外に「転用」する目的で、農業委員会の事前の「許可」を受けることで非農業者(一般の方)に譲渡、貸借することができます。しかしながら、これにはきちんとした計画を書面で示す必要があり、内容によってはかなり細かな図面や面積、数値を求められます。また、農地の種類によっては、どう計画を立てても絶対に転用ができない農地もあります。

 

(6)権利の処分問題

よく、農地には古い「権利」が登記上付いていることがあります。具体的には、「抵当権」「根抵当権」「仮登記」などが多いですが、これらの権利が付いたままでは、第三者へ譲渡することが困難となる場合があります。そして、権利の多くが昭和初期などに設定された抵当権などであり、権利者の所在や生死が不明であることから、これらの権利を抹消するためには、大変なコスト(時間、労力、費用)が掛かります。ひどいケースだと外すために、数十万、百万単位の費用が掛かることがあり、事実上土地自体の処分ができないということもあり得ます。

 

以上、農地を相続する際の問題点6つでした。このほかにも細かな問題点はあるかと思いますが、大まかにはこういったことが挙げられます。

 

現代社会において「農地の相続」にはネガティブな要素が多く含まれます。それゆえに感情的な問題を引き起こすことがあり、相続人間の対立や紛争の原因となることがあり得ます。

 

そうならないためには、相続が発生する前から家族間における適切なコミュニケーションや起こりうる問題点などを把握し、事前に円満な相続プロセスを確保しておく必要があります。

 

また、すでに相続が発生している方も「農地の相続」が引き起こす問題点をしっかりと考慮しながら、計画的に相続を進めていくようにしていきましょう。

 

 

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